【SW2.0】ツクシの大冒険 よんかいめ

注)この記事はTRPG「ソードワールド2.0」身内セッションの記録である。
  勝手な主観と記憶で書いていますので、実際と多少は違っていることをご了承ください。
みんな久しぶり。
泣く子も黙る大魔導士、ツクシだよ。
前回、タンヤ村での事件を解決した僕たち。
カーザの町に戻ってきて、赤き翼亭でのんびりまったりする日々に戻った。
そうそう、前回の冒険で経験を積んだ僕は、ファミリアっていう使い魔のようなものを持つことができるようになったんだ。
僕の家族たちが持っているのを見て、ずっと欲しいと思っていたからね。
さっそく、徹夜して作ったよ。
じゃーん!
カエルのケロちゃん!
かわいいでしょう。
泳げるし、MPも持ってるんだよ。
「レイヤー!見て見て!ケロちゃんだよ。」
「ぴぎゃー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
レイヤが後ずさってる。どうしたんだろう。
ケロちゃんが神々しすぎて驚いたのかな。
すっかりお馴染みになった冒険者の店、赤き翼亭。
僕たちはいつも通りそこに集まって夕食を取っていた。
僕の左隣でしあわせそうにお肉を頬張っているのが、エルフのプリーストであるフローラ。
対称的に、右隣で静かにお茶をすすっているのが、ルーンフォークのマギテックであるエトランゼ。
僕の真正面で黙々とお肉を切り分けては口に放り込んでいるのがナイトメアのファイター、アルベルト。
そして、何故か僕から距離を置いて、エトランゼの影に隠れるようにシャドウのフェンサー、レイヤが座っている。
レイヤはいつも僕の隣にいてくれたはずなんだけど、最近妙によそよそしいんだ。僕、何かレイヤを怒らせるようなことしたかなぁ。
扉が開き、一組の冒険者が入ってきた。
たぶん、知らない顔だ。
だけど、ここはルキスラとフェンディルの間に位置する冒険者の店。通りすがりの冒険者たちが立ち寄るのはめずらしいことではない。
のだけれど。
「アネモネ!?」
冒険者の一人が、僕の方を見るなり大きな声を上げた。優男といった印象で、装備からフェンサーであろうことがわかる。
「そんなはずないだろ」
仲間の男がそうたしなめるものの、彼の表情も動揺をあらわにしている。兄弟なのか、優男と似た顔立ちをしているが、こちらはもう少し野性味溢れたいかにもファイターといった男である。
そして。
二人の男たちの視線は僕……ではなく、僕の隣に座っているエトランゼに向けられていた。
エトランゼは僕の知る限りあまり感情を表に出さない方であるが、男たちのやり取りに関してもやはり表情を変えず視線だけを向けていた。わかりずらいけど、男たちやアネモネという名前に覚えがあるような感じではない。
「こちらの方が、どうかしましたか?」
問いかけたのは、フローラである。
もちろん僕も、アルベルトやレイヤも、彼らの仲間たちも、その答えを静かに待った。
しばしの沈黙の後。
ファイターの男が口を開いた。
「彼女が俺たちの昔の仲間に瓜二つで。いや、そんなはずはないんだが……少し、話をさせてもらってもいいだろうか」
ファイターの男は、名をカインといい、このパーティーのリーダー。
フェンサーの男は、アベルといい、やはりカインとは兄弟なんだそうだ。
二人はずっと一緒に冒険をしていて、現在はエルフのソーサラーであるエリカ。グラスランナーのシーフ、グレイ。人間のプリースト、マリアを加えた五人パーティー。
今までフェンディルを拠点に活動していたが、更なる仕事を求めてルキスラ方面に移動している途中なんだって。
僕たちも自己紹介を終えて、カインが話始める。
それは、今の仲間たちと会う前の話。
カインとアベル。そして当時の仲間たちを加えたパーティーは、フェンディルは花と遺跡の丘の辺りで、一人のルーンフォークと出会った。
記憶がなく、途方にくれていた彼女に、パーティーメンバーであった女性が近くに咲いていた花からアネモネという名をつけて、半ば拾うような形で仲間に加えた。
それから、彼らのパーティーはさまざまなクエストをこなしてきた。
アネモネは無邪気で、良く感動し、良く笑う活発な人物で、パーティーの空気は明るくなった。
だけど。
遺跡の探索をしている途中、悲劇は起こった。
うっかり発動させてしまった罠により、遺跡は崩落。モンスターに追いたてられながら命からがら逃げ出せたカインとアベルを除き、パーティーメンバー全員が帰らぬ人となってしまった。
「だから、ここにアネモネがいるはずはないんだ……悪かったな。こんな話を聞かせてしまって」
「いえ、大事な話です。エトランゼも、過去の記憶がないそうなの」
フローラの言葉に、一同がはっとなる。
みんな同じことに思い至ったみたいだ。
ルーンフォークは、一度死んで蘇生を受けた場合、他の種族のような「穢れ」は発生しない。その代わりに、最新の一年の記憶を失う。それは、この世界の冒険者なら誰でも知っているような常識だ。
そして、アネモネには恐らく一年以上前の記憶はなく。エトランゼには昔の記憶が一切ない。
同一人物の可能性は、ないわけではないのだ。
でも。
アネモネという名のルーンフォークの遺体が、置き去りにされた遺跡から見つけ出され、何者かの蘇生を受けて生き返るなんて、そんな奇跡が起こるものだろうか。
「もしかしたら、そのアネモネって子は同じジェネレータから生まれた姉妹機だったのかもしれないねぇ」
いつの間にか、赤き翼亭の店主であるエヴァさんが僕たちのテーブルの近くに来ていた。
「自分のこと、知りたいのでしょう?エトランゼ」
エヴァさんが、意味ありげな視線をエトランゼに向ける。
「行ってみるんだったら、もう少し詳しく初めてアネモネに会った場所を教えられるぜ」
そう言ってきたのは、アベルだ。
「どっちにしろ、俺たちにとってつながりのある人物であることには変わりない。応援してるぜ、エトランゼ」
調子のよい言葉に、すかさずアルベルトが口を開く。
「それなら、フェンディルの冒険者の店を紹介してもらえないか。あと、向こうで何か変わったことはあるか?」
「それなら、首都のディルクールに月桂樹亭って店があるから行ってみてくれ。俺たちの名前を出せばわかってくれるはずだ。あと、最近変わったことか……そういえば蛮族の襲撃が増えているな」
カインが丁寧に答える。
「そろそろ遠出もしてみたいと思っていたし、行ってみるか。フェンディルに」
こうして僕たちは、翌朝、フェンディルに向けて旅立つことになった。
道中、リザードに襲われて多少苦戦したものの、僕たちは無事フェンディルの首都、ディルクールに到着した。
えっ、なんでリザードごときに苦戦してるのって?
ち、ちょっとダイス目に恵まれなかっただけだよっ。
とにかく、ディルクールに到着した僕たちは、早速カインに紹介された月桂樹亭という名の冒険者の店にやってきた。
店主は、カインたちの名前を出すと快く迎えてくれた。更に、エトランゼを見て驚いていた。店主は、アネモネのことも、一年前の事件のことも知っていた。というより、件の遺跡探索の依頼を出したのがこの店だった。
結局、その依頼は後に他の冒険者によって解決されたが、カインとアベルの仲間たちの消息は依然として不明のままだそうだ。
「ところで、何か仕事はないか」
唐突に。アルベルトが店主に聞く。
「仕事ですか。そうですね、あなた方はまだこの街では新参ですから、まずは試させていただくためにも蛮族退治とかどうでしょうか。最近フェンディルでも蛮族による襲撃が増えているんですよ」
「蛮族か。そういえばカインもそんなことを言っていたな」
こんな調子でアルベルトと店主の会話が進んでいる。
そんな中。
エトランゼは、何を言うでもなく僕たちの後ろに立っていた。
彼女が、あまり自己主張をする方ではないことはみんな知っている。だけど、今回フェンディルまできたきっかけはエトランゼだ。彼女自信が決めなければ、きっと始まらない。
だから、僕にしては珍しくエトランゼに問いかけた。
「エトランゼは、どうしたいの?」
少し、間があった。
躊躇いとか、遠慮といったものではなく、自分の意思を伝えることに慣れていない。そんな間を経て、エトランゼはぽつりと言った。
「アネモネを初めて見たという、その場所に行ってみたい」
「それなら、遺跡と花の丘だね。アルベルトー」
店主と話し込むアルベルトにエトランゼの要望を伝えると、それを聞いていた店主が僕たちの行先方面の仕事を見繕ってくれる。
「遺跡と花の丘の辺りで、先日ボガードによる襲撃があったんだ。見かけたら退治してもらえないか。一体につき五百ガメル出そう」
もちろん、その依頼を引き受けない理由はない。
蛮族や、ルーンフォークの集落についての情報を集め、地図を購入した僕たち。
その日はゆっくり休み。
翌朝、遺跡と花の丘に向けて出発した。
「あそこにいるよ!」
僕の指さしにみんながかけより、そこにいるボガードをなぎ倒していく。
それにしても、こんなに見つけられるなんて僕はやっぱり天才だよね。レイヤも楽しそうにオーバーキルしてるし、本当に良かった。
「あっ、あそこにもボガード……わっ!」
反対側を指差し、駆け出した僕。そこに、石ころが転がっていたんだ。つまずいてバランスを崩した僕は、うかつにも思いっきり地面と口づけしてしまった。
拍子に、ケロちゃんか飛び上がる。
そして、レイヤに張り付いた。
「ぴぎゃー!???」
レイヤが、ありえない雄叫びを上げて、ものすごい勢いでボガードに殴りかかりに行った。
強いなぁ。
遺跡を調べているという一団に遭遇した僕たちは、便乗して近くにキャンプを張り一泊。
翌日。
調べてあった、アネモネが最初に見つけられたらしい場所の一番近くにあるルーンフォークの集落に到着した。
ルーンフォークのことはルーンフォークに聞け。ということで、僕たちはまずこの集落の長を訪ねた。
事情を説明すると、長はエトランゼと良く似たルーンフォークを見たことがあるらしい。でもそれは、エトランゼでもアネモネでもない…?
不思議に思っていると、同じ型。それも、女性型のルーンフォークばかりが暮らす隠れ里が存在するという噂を教えてくれた。
つまり、エトランゼもアネモネもそこの出身という可能性がある。行ってみようという話になったのだけれど、さすがただの噂だけあって長でも大体の場所しかわからないんだって。でも、もしかしたら外部の人間ならわかるかもとアドバイスを受けて、集落に駐留していた行商人に話を聞いたんだ。そうしたら、かなり詳しい位置まで教えてもらえた。
そうして、教えてもらった場所に到着したんだけど、辺りは木と茂みばかりで何にもないんだよね。
さすが隠れ里って言われているだけある。
まぁ、どんなに隠したって僕の直感でちょちょいのちょい。だよね。
って、思ってたんだけど。
入口は、なかなか見つからない。
こんなところに、村なんてないよ。
疲れたなぁ。
座り込んでサボって……いや、休憩してると、レイヤがやってきた。
「何サボってるんだよ、こっちは知力を使う探索が苦手なんだから、ツクシだけが頼りなんだよ!」
すごい剣幕で迫ってくる。うわ、押さないで。うわわ。
バランスを崩した僕は、後ろの茂みの中にころん。と転がった。
え?あれ?
茂みをなぎ倒した先に、道があった。
「あった!あったよ!」
レイヤが大喜びでみんなを呼ぶ。
まさか、こんな所に道が隠されていたなんてね。さすがの僕も苦労したよ。
道を見つけてしまえば早いもので、すぐに目の前に建物が見えてきた。
のだけれど。
隠れ里に足を踏み入れる前に、まず違和感があった。
見えてきた建物が、どれも異常に大きい。僕たちが訪れたルーンフォークの集落はもちろん、カーザの町でもなかなか見ないサイズだ。
更に。
隠れ里に近付くにつれて、違和感は強まる。
「誰も、いないな」
レイヤが言うとおり。そこには人の気配がなかった。
いるはずの、ルーンフォークの姿も、気配すらなく、辺りは静まり返っている。
「何か、思い出すことはありますか?」
フローラの問いに、静かに首を横に降るエトランゼ。
だけど、その面持ちは真剣に辺りを見回している。
とりあえず目の前にそびえ建つ三つの建物を順番に調べるために中へ入ってみることになった。
一つ目の建物は、だだっ広い空間だった。
高い天井。壁際に設えられたロッカー。遠くに設置された的のようなもの。どうやら、訓練施設らしい。
相変わらず、人の気配はない。だけど、埃のつもり具合から、打ち捨てられて何年も経っているという風でもない。せいぜい数ヶ月といったところだろうか。
「あっ、何かあるよ」
何気なく開けたロッカーの中に箱が入っていた。
エトランゼが来て、物を確認する。
「弾薬ね」
彼女にとっては見慣れた、ごく普通の弾薬が一揃え。
「せっかくだし、もらっていったら?」
「そうね。弾薬も結構お金がかかるから、助かるわ。それに、ここにいた住人たちは戻ってきそうもない」
エトランゼは、ロッカーに一礼してから中の弾薬を手に取った。
それ以外に目ぼしいものはなく、次の建物へ移動することに。
次に入った建物も大きい。だけど、中に入ってしまうとそうでもなかった。細かく区切られたブースに、それぞれ寝台が設えてある。居住スペースというよりは、兵舎のような殺風景さだ。
見て回った感じ、ほとんど物が残されていない。ある程度荷造りして出ていったのではないか。そんな風に思えた。
最後に入った建物もまた、大きかった。ホールのようなだだっ広い空間の周囲に、本棚が並んでいる。そして、中央には不自然にぽっかりと穴が空いていた。そう。そこに何かがあったかのように。
「ここは、ジェネレータの置いてあった部屋らしいな」
レイヤが、何気なく床に落ちていた書類を拾い、パラパラとめくってから言った。
「魔導機文明語で書いてあるから僕には読めないけとど、恐らくジェネレータの説明書だと思う」
そう付け加えて、書類をエトランゼに渡す。エトランゼも中を確認して、肯定してみせた。
「ここのジェネレータは、能力の高い特定の素体だけを用いて量産していたみたい」
ぽつりと、付け加える。
だけど、それ以上の情報はなく。
僕たちは釈然としない気持ちでルーンフォークの隠れ里を後にした。
ルーンフォークの集落へ向かう道を歩いていた僕たちは、前方に煙が上がっているのを見つけた。
あれは、集落の方だ!
誰からともなく駆け出す。
早さに自信のない僕は、とっさにレイヤの背中に捕まる。
集落が、蛮族に襲われていた。
駆けつけた僕たちの姿に気付き、数体の蛮族が向かってくる。
そいつらを蹴散らすと、蛮族と戦っていたルーンフォークの男がこちらにやって来て言った。
「ここは大丈夫だ。それより、奥へ……あいつらの目当てはジェネレーターなんだ。そっちを、頼む」
僕たちは集落の奥へ走った。
そこにいたのは、長を始めとした集落のルーンフォーク数名。そして、対峙する蛮族と、目深にフードをかぶった男の後ろ姿。
フードの男が、ちらりとこちらに振り向く。
「潮時か……」
そんなことを呟いた。と、思ったら、男は胸の前で何か印を切るような仕草をする。
次の瞬間。
ふ……っと。
男と蛮族は、かき消えるように姿を消した。
その夜。
再度の襲撃を警戒して、僕たちは集落にとどまっていた。
今日はたくさん魔法を使ったから疲れたし、早く寝ようと思ったんだけど、レイヤが外に出るみたいだから僕もついていくことにした。
外に出たレイヤの視線の先に、ぼんやりと空を見上げるフローラの姿。
そういえば夕食の時も少しぼんやりしていたなぁ。出されたご飯は全部食べてたけど。レイヤなりに心配してたんだね。話しかけるのかな。と思ったんだけど。
じー…っ
暗闇に紛れて、ただただフローラを見つめ続けている。
そうか。これがシャドウ流の励ましなんだね!
僕もレイヤの後ろからフローラの横顔を見つめようっと。あ、フローラがこっちに気がついた。何かすごい泣きそうな顔してるよ。
「どうしたの大丈夫?」
「だ、だだだ大丈夫ですっ!」
「いや、そんな風には見えないよ。夕食の時も上の空だったし。何かあったのかい?」
「いえ、本当に大丈夫です。何でもないです」
レイヤの声にフローラが再度大丈夫と答える。だけど、全然大丈夫そうには見えない。
じー。
フローラの表情を見つめてみる。
僕の視線に気付いたフローラは、明らかに動揺した表情で。
しばらく間をおいて。
やがて、口を開いた。
「ツクシちゃんの目は誤魔化せませんね」
そして、フローラの口から語られる。
あの、ジェネレータの部屋の前で会ったフードの男が、自分の探している兄かもしれない。と。
翌朝。
僕たちはディルクールに戻った。
ボガード退治の報酬をもらうため。
そして、今回の件を報告するため。
月桂樹亭の店主は、僕たちの退治したボガードの数に驚きながらも報酬を支払ってくれた。
そして、報告したジェネレータを狙う人物の話については、ひとつの情報を。
ルキスラ帝国で、ジェネレータの培養液を狙った襲撃が起こったらしい。そしてその現場で、フードの男らしき人物が目撃された。
一通り情報を交換してから、僕たちは月桂樹亭のテーブルについた。
今後の方針を決めなければならない。
「例の遺跡に行ってみたい。アネモネが死んだという、あの遺跡に」
珍しく、エトランゼが自ら口を開いた。
「では、準備が必要ですわね。きちんと消耗品の補充をしないと」
「遺跡について、情報を集める必要があるな」
口々に、そう答える。
エトランゼは驚いたように言った。
「いいの……?私のわがままに近いと思うのだけれど」
「アネモネさんの足跡をたどることが、兄に繋がるような気がしますの」
ひとつ。決意を固めたらしいフローラが微笑む。
「もちろん、僕もついていくよ。楽しそうだからね」
僕が主張し、レイヤが頷く。
「まぁ、仲間だしな」
ぶっきらぼうに、アルベルトが呟く。
エトランゼは、しばらく驚いた表情で固まっていたが、やがて穏やかな表情に変わる。
「その……ありがとう」
その笑顔は、まるで野に咲く一輪の花のような愛らしさであった。
≪つづく≫
成長メモ
ツクシ(種族:タビット)
ソーサラー Lv4→5
スカウト Lv1
成長 生命力 8→9
MP軽減:真語魔法 取得

TRPG

Posted by kiyulun